半月前にゴルフラウンドをしていたのに。
病気の進行は聞いていたけど、ここまで早いとは思わなかった。
普通のお通夜と告別式はせずに無宗教で友人とのお別れの会をするのが彼女の意思だったそうだ。

自宅のリヴィングに、花がたくさん飾られ、小さくジャズの流れる空間で、横たわっていた人は、生前と変わらずに、とてもとても美しかった。

彼女のお嬢さんが訪れた人の献花を手伝い、お別れをした後にリヴィングのテーブルで飲み物をいただき、故人の思い出にひたる形式。
それは、彼女本人が、その形式から、飾る花、知らせる人や方法まで子供達に指示して行った事という。
私へ知らせは彼女の名のlineで 「娘です・・・・」から始まっていた。
「誰にも迷惑かけたくないから」って言っていたね。
逝く前に病院に一泊だけ、子供と姉に見守られて逝った彼女は、最期まで自分の美意識を貫いた人だった。
大好きだったマスターズの会期中だったね。
「あのコースの映像を見るだけで気持ちいいのよ。アザレアの花が綺麗よね」
春たけなわの日。前日まで自宅で生活して普通に歩いて食べて、入院したのは最期の一日だったという。
あっぱれすぎるよ。

何をしててもサマになってカッコよかった。
近づきにくいオーラを出してるくせに、仲良くなると情の深いのがわかった。
酔っ払うとハグ魔になった。


コロナと同時に発病し、その直後同じ病気になったご主人を先に送り、すべてその後のこともやり切って、自分の闘病を継続した。
過酷すぎると思って見てたけど、何か愚痴ったりすることは一切なかった。点滴も辛かったろうけど、自分の頭を「ハゲ散らかっちゃったよ」と自虐して笑っていた。その後薬をやめてからのグレイヘアも彼女にとても似合っていた。
いつも完璧にセンスよく、料理も上手で家の管理も闘病中でも手を抜かなかったという。
お子さんたちの喪失感はどんなかだろう。
「もっと迷惑かけて欲しかった」
「もっと世話かけてもらいたかった」と口々に言うお子さんたち。
鮮やかすぎる最期は残された者たちの喪失感を大きく残す。
それは彼女の誤算かもしれない。
しかし、それを受け入れるのは私たちのやるべき事なのだろう。彼女に敬意を表して。